日本薬理学雑誌
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特集:メカニカルストレスおよび酸化ストレスによる心血管系分子・細胞反応
ラジカル認識抗体を用いた酸化ストレス由来プロテインラジカル検出法
田島 壮一郎土屋 浩一郎大西 秀樹兼松 康久玉置 俊晃Ronald Mason滝口 祥令
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2005 年 126 巻 4 号 p. 246-249

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抄録

通常生体は,強固な内在性抗酸化システムにより酸化ストレスの原因となる活性酸素・活性窒素種を効率良く消去することで,生体を酸化ストレスから守っている.しかしこれら防御システムを越える,または抗酸化システムを巧妙にくぐり抜けた活性酸素・活性窒素種によって,シグナル伝達経路に影響を与えたり,タンパク質の変性や脂質の過酸化およびDNAの損傷がおきる.そしてこれらの長期間にわたる蓄積が,生活習慣病を始めとする様々な疾病の原因になると考えられている.ところで酸化ストレスが生体分子と相互作用することの関与を直接証明するためには,生体高分子が酸化ストレスによって生成するラジカル中間体を検出することが重要である.タンパク質では,チオール残基やチロシン残基が酸化を受けやすいことが知られているが,現在これらプロテインラジカルを直接検出する方法としてはEPR(Electron Paramagnetic Resonance:電子スピン共鳴)法が唯一の測定法として使われている.しかしEPR法でプロテインラジカルを検出するためには大量のタンパク質(数10 mg)が必要であり,微量のタンパクに応用することは困難であった.そこで,我々はEPR-スピントラップ法を応用して,ラジカルと安定な複合体を形成するスピントラップ剤と生体高分子が結合した状態を認識する抗体を作成し,Western blotting法を応用した新たなプロテインラジカルの検出法を検討した.その結果,ミオグロビンおよびチオレドキシンにおいて酸化ストレスによるプロテインラジカルの生成を検出できたので報告する.

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© 2005 公益社団法人 日本薬理学会
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