日本薬理学雑誌
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特集:メカニカルストレスおよび酸化ストレスによる心血管系分子・細胞反応
脳血管におけるストレッチと低浸透圧刺激に対する筋原性反応のイオンメカニズム
石川 智久中山 貢一
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2005 年 126 巻 4 号 p. 262-266

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抄録
脳循環は自己調節能が発達しており,脳動脈の内腔圧が上昇すると血管平滑筋は収縮する.この筋原性収縮の少なくとも一部は,電位依存性Ca2+チャネル(VDCC)を介した細胞外からのCa2+流入に依存する.しかし,このVDCCの活性化をもたらす膜の脱分極を惹起するメカニズムについては未だ明らかではない.伸展活性化(stretch-activated:SA)カチオンチャネルはその候補の1つであるが,その分子実体を含め,不明な点が多い.著者らは,イヌ脳底動脈における低浸透圧刺激による収縮反応を詳細に検討することにより,伸展誘発収縮の新しい機序を提唱した.まず,低浸透圧刺激による細胞膨張により,膜に伸展刺激が加わり,SAカチオンチャネルが活性化される.このチャネルを介して流入したCa2+が,Ca2+活性化Cl-チャネルを活性化して膜が脱分極する.その結果,VDCCが活性化され,Ca2+が流入して収縮が惹起される.このSAカチオンチャネルをトリガーとした新たな機構が,内腔圧上昇による筋原性収縮においても働いている可能性は充分に考えられる.本稿では,SAカチオンチャネルを中心に,脳血管の筋原性反応に関与するイオンチャネルについて概説する.
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© 2005 公益社団法人 日本薬理学会
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