日本薬理学雑誌
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特集:メカニカルストレスおよび酸化ストレスによる心血管系分子・細胞反応
流れ刺激存在下の血管内皮細胞において認められる細胞内カルシウム濃度上昇によるカルパインを介する細胞形態の制御
宮崎 拓郎山本 雅之本田 一男大幡 久之
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2005 年 126 巻 4 号 p. 256-261

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抄録

血管内皮細胞は常に血流に起因する機械刺激を受容しており,様々な機械刺激を感知して種々の細胞応答を呈することが知られている.実際,内皮細胞に対して血流を模した流れ刺激を負荷すると,負荷直後に細胞内カルシウム濃度上昇が認められ,さらに持続的に流れ刺激を負荷することにより,内皮細胞が流れの方向に整列することが報告されている.これらの機械受容応答の詳細な分子メカニズムは未だ明らかになっていないが,他の非筋細胞または筋細胞における形態変化や筋原性応答と同様に,内皮細胞の形態変化もまた細胞内カルシウム濃度の変化によって厳密に制御されている可能性が示唆される.著者らは,共焦点レーザー顕微鏡および干渉反射顕微鏡を用いたバイオイメージング法により流れ刺激存在下の内皮細胞のカルシウム応答と細胞基底部における形態変化をリアルタイムで観察することにより,両者の関連性について検討した.静止時の内皮細胞において自発的なカルシウム応答が認められたが,流れ刺激の負荷によりカルシウム応答の頻度が増加し,同時に流れの下流部分における偽足の伸展と上流部分における収縮が認められた.流れ刺激によるカルシウム応答と形態変化の空間的相関について検討を行ったところ,カルシウム応答の開始部位は干渉反射像に認められる接着斑と一致し,応答後に収縮することが明らかとなった.また,著者らはイメージング法に薬理学的手法を組み合わせ,このカルシウム応答および収縮に機械受容チャネルを介する細胞外からのカルシウム流入および細胞内カルシウムストアからのカルシウム遊離が関与し,インテグリンを介する細胞接着の変化によって影響を受けることを明らかにした.さらに,流れ刺激によるカルシウム応答がカルパインを活性化することで接着斑が解除され,結果的に収縮が引き起こされることを見いだした.

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