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日本薬理学雑誌
Vol. 126 (2005) No. 6 P 381-384

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http://doi.org/10.1254/fpj.126.381

特集:心不全研究のニューパラダイム

増殖能を持たない心筋細胞においては,細胞増殖のメカニズムである細胞周期は本来機能していないものと考えられていた.われわれは以前から心不全の発症メカニズムと治療法に関する研究を続けてきたが,最近の一連の研究で,心筋細胞においても細胞周期制御因子が存在し,それが心不全に関連する心筋細胞特有の機能を担っていることを見いだした.その一つは,心不全の重要な増悪因子である心筋細胞肥大に,細胞周期の制御因子が関わっていることを示唆するいくつかのデータである.われわれはCDKインヒビターのp16タンパクを発現するアデノウィルスベクターを作成し,それを培養心筋細胞に作用させてみた.するとこのアデノウィルスを作用させた細胞で,血清刺激やエンドセリン,アンジオテンシンIIなどによる心筋細胞肥大が抑制されることがわかった.このことは細胞周期制御因子が心筋細胞においては肥大の制御に関わることを示唆すると考えられた.二番目の知見は,本来増殖をしない心筋細胞の細胞周期制御因子を操作することにより心筋を再生することが出来たことである.その研究では,サイクリンD1を核移行シグナル(nuclear localizing signals=NLS)により強制的に核に移行させるアデノウィルスベクターを作成し,培養心筋細胞に作用させた結果,本来増殖能を持たない心筋細胞を増やすことに成功した.このことは自己心筋細胞自体を増やすことが可能であることを示唆しており,今後の展開によっては新しい心不全治療法としての心筋再生療法につながるものと考えられた.これらのことより,心筋細胞における細胞周期の研究の発展が,心不全の克服のために今後も重要であると思われる.

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