日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
塩酸エピナスチン(アレジオン®ドライシロップ1%)の薬理学的特性および臨床効果
大村 剛史川嵜 哲雄
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2006 年 127 巻 1 号 p. 37-46

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抄録

塩酸エピナスチンは,1975年にドイツベーリンガーインゲルハイム社により合成されたアレルギー性疾患治療薬である.日本においては,気管支喘息,アレルギー性鼻炎,蕁麻疹,湿疹・皮膚炎,皮膚掻痒症,痒疹,掻痒を伴う尋常性乾癬の治療薬として,1994年4月にアレジオン®錠10およびアレジオン®錠20として輸入承認を取得し,同年6月から販売している.その後,小児への適用のためドライシロップ製剤の開発が進められ,アレルギー性鼻炎,蕁麻疹,皮膚疾患(湿疹・皮膚炎,皮膚掻痒症)に伴う掻痒の適応症にて2005年1月にアレジオン®ドライシロップ1%として承認された.本薬は選択的ヒスタミンH1受容体拮抗作用を主作用とし,ロイコトリエンC4(LTC4),血小板活性化因子(PAF),セロトニン等に対する抗メディエーター作用と肥満細胞からのメディエーター(ヒスタミン,SRS-A(LTs),PAFなど)の遊離抑制作用を有しており,アレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎などに効果を示すと考えられている.また,種々の病態モデル(皮膚炎モデル,皮膚掻痒モデルおよび鼻炎モデルなど)で効果を示すことが明らかとなっている.臨床試験においては,アレルギー性鼻炎およびアトピー性皮膚炎患児において,ケトチフェンドライシロップとの非劣性が検証された.また,安全性にも特に問題はみられなかった.さらにアトピー性皮膚炎患児に12週間投与し,掻痒に対する有効性と安全性が確認された.また,中枢への作用が少ないことは非臨床ならびに臨床試験において明らかとなっている.以上のように,本剤の抗ヒスタミン作用は強力で,その作用発現は速く作用持続も長い小児用製剤として初めての1日1回の用法を持つドライシロップ製剤である.また,本剤は選択的ヒスタミンH1受容体作用を有するが,従来の抗ヒスタミン作用を有する小児用のドライシロップ剤とは異なり中枢移行性が少なく,中枢抑制作用の少ない特性を有する.

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© 2006 公益社団法人 日本薬理学会
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