日本薬理学雑誌
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治療薬シリーズ (4) 脳梗塞急性期
脳梗塞モデルとヒトへの外挿性
進 照夫吉川 哲也鬼頭 剛
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2006 年 127 巻 6 号 p. 481-484

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抄録

脳梗塞急性期における新薬開発のための実験的脳梗塞モデルとしては,種々の動物を用いた多数の実験が報告されており,薬効評価においても梗塞巣を縮小する薬物の報告も数多くある.しかし,臨床においては,それらの化合物の多くが有効性を示めさずに開発が中止されているのも現状である.このことは,これまでの実験的脳梗塞モデルの結果からヒトへの外挿が困難であったことを意味しており,その一因として,実験動物とヒトとの脳高次機能の違いにあると推測される.1999年のStroke誌にヒトへ外挿可能な大動物のモデルを要望するSpecial Reportが掲載され,現在では,臨床試験を実施する前に大動物を用いた評価試験のデータを要求される傾向にある.我々は1997年から,ヒトの脳卒中病態に近いモデルを作製する目的で,血管走行や行動においてヒトに近い動物としてサルを選択した.自家血血餅を内頸動脈から注入することにより中大脳動脈(MCA)を閉塞する,非侵襲的で比較的再現性の良い脳塞栓症モデルを確立した.本モデルの最大の特徴は神経脱落症状にあるが,その神経脱落症状として,血餅注入直後から意識レベルの低下,血餅注入側の対側での麻痺および筋緊張の低下が観察され,座位あるいは横臥位の状態がみられる.血餅注入24時間後の脳梗塞巣は,MCA灌流域を中心として皮質および線条体に形成され,神経脱落症状スコアと脳梗塞巣サイズに相関がみられる.

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