日本薬理学雑誌
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特集:消化管病態研究のフロンティア
腸炎疾患における消化管筋層部炎症応答と運動機能障害
堀 正敏藤澤 正彦尾崎 博
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2006 年 128 巻 2 号 p. 72-77

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抄録

クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患(inflammatory bowel disease:IBD)では重篤な消化管運動機能障害を発症するが,これは腸内環境の悪化を招いて粘膜炎症をさらに悪化させる.すなわち,消化管運動機能の改善は疾患の治癒や緩解にとって極めて重要な治療ステップと考えられている.この消化管運動機能障害はIBDに限定されるものではなく,腸閉塞など様々な原因で生じる腸炎や,外科手術後の消化管機能障害(post-operative ileus:POI),敗血症などで広く認められる症状であるが,消化管運動機能低下に関わると考えられる筋層部での炎症応答についてはまだ良くわかっていない.消化管筋層部において,リンパ球系の細胞は粘膜層に比べて圧倒的に少ない代わりに,漿膜下と筋層間神経叢,内輪走筋内に多数のマクロファージが健常時から常在している.また,平滑筋細胞自身も炎症応答細胞として機能することから,筋層部は粘膜部とは異なる独自の炎症応答機構を備えていると考えられる.ここでは,消化管筋層部での炎症応答機構に着目し,消化管運動機能障害の分子機構について概説したい.

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