日本薬理学雑誌
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特集:消化管病態研究のフロンティア
PARの消化管機能
川畑 篤史
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2006 年 128 巻 2 号 p. 82-87

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抄録

Proteinase-activated receptor(PAR)は,特定のセリンプロテアーゼによって活性化されるGタンパク共役7回膜貫通型受容体であり,PAR1,PAR2,PAR3,PAR4の4つのファミリーメンバーが知られている.これらのPARは消化器系臓器全般に広く発現し,多様な役割を演じている.PAR2およびPAR1はいずれも胃粘膜において種々の機能の制御に関与し,第一義的には粘膜保護の方向に働いているが,その機能メカニズムは大きく異なっている.消化管平滑筋運動調節においてPARは抑制的な面と促進的な面を併せ持ち,その機能の特性やメカニズムは動物種や臓器部位によって大きく異なる.またPAR2は内臓痛および腸炎症の発現,さらに外分泌機能の調節にも関与している.このように,PARの消化管機能は複雑であるが,PARアゴニストあるいはアンタゴニストは,胃粘膜傷害のほか,消化管運動・内臓痛覚の異常に関連する過敏性腸症候群,炎症性腸疾患などの治療にも利用できる可能性があり,今後,特に臨床応用の面における研究の進歩が期待される.

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© 2006 公益社団法人 日本薬理学会
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