日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
特集:パスウェイ解析からネットワーク解析へ
高血圧性糸球体硬化進展におけるRho/Rho-kinase系の役割
―Rho-kinase阻害薬の糸球体保護効果とその分子機序―
錦見 俊雄
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 128 巻 3 号 p. 153-159

詳細
抄録

最近の研究はsmall GTP結合タンパクの生理学的な重要性を示している.GTP結合タンパクの中でRhoは種々の細胞機能の分子スイッチとして働くことが知られている.Rhoのエフェクタータンパクの中でRho-kinaseがもっともよく研究され,その細胞内機能や細胞内情報伝達も広く研究されてきた.しかしながらin vivoの機能の情報については限られている.最近のRho-kinase特異的な阻害薬Y-27632やfasudilの開発によってin vitroとin vivoの両方におけるRho/Rho-kinase系の役割に対する理解は進歩をとげた.しかしながら,現時点において,腎疾患におけるRho/Rho-kinase系の役割を検討した研究は少ない.最近の研究ではRho-kinase阻害薬が尿管結紮による腎間質の線維化を有意に弱めたことを示している.このように,Rho/Rho-kinase系は腎間質の線維化の病因にある役割を果たしている.しかしながら高血圧性糸球体硬化におけるRho/Rho-kinase系の役割を検討した研究は非常に少ない.最近,我々ならびに他の研究者らはある種の高血圧モデルにおいてRho/Rho-kinase系が糸球体硬化の進展に一部関与していることを報告した.この総説において,我々はいくつかの高血圧モデルにおける腎糸球体硬化の進展におけるRho/Rho-kinase系の役割について述べる.これらの慢性のRho-kinase阻害は高血圧性糸球体硬化の新しい治療的アプローチになる可能性を示している.我々の結果はまた,Rho-kinase阻害薬の腎保護効果の機序は細胞外マトリックス遺伝子,マクロファージ/単球の浸潤,酸化ストレスなどの抑制と,eNOS遺伝子の亢進を一部介していることを示している.

著者関連情報
© 2006 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top