抄録
統合失調症は「神経発達障害仮説」が提唱されている.非競合的NMDA受容体拮抗薬であるフェンシクリジン(PCP)を新生児期投与したICRマウスとSDラットでは,イボテン酸の生後6日腹側海馬注入ラットモデルと同様に12日齢時の脳切片で前頭前皮質,中隔,視床および小脳で神経細胞とS-100陽性アストロサイトのアポトーシスの発現がみられた.また,rostral migratory stream中では増生した幹細胞でGLASTの発現がみられた.一方,新生児期にPCPを投与したマウスにD-cycloserineを皮下投与したときには上記の病理変化はみられなかった.新生児期PCP投与マウスでは4-6週齢の行動観察でPPIの障害,PCP投与運動亢進の抑制およびモーリス水迷路学習能の障害がみられた.以上,この統合失調症モデルの利用は統合失調症の病因の解明,セリンおよびグリシンをターゲットとした新規治療薬の開発の一助となることが期待される.