日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
特集:薬理作用の予測法におけるIn vitro試験法の有用性と限界
ラット全胚培養法における医薬品の薬理作用について
横山 篤
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 128 巻 5 号 p. 303-307

詳細
抄録
日本における医薬品の安全性試験は,欧米諸国が比較的早い段階で臨床試験に入るのに比べて徹底して前臨床試験つまり動物実験を実施してから臨床試験に移行することから,かなり重要視されている.しかし,近年欧米諸国を中心に無駄な動物実験はしない,実験動物数の削減,培養細胞などin vitro試験系への転換が叫ばれ,様子が変わってきた.本来,動物愛護の精神により検討されてきたテーマである,動物数の削減や痛みの除去などが中心であったが,そこに動物実験による膨大な時間と予算と設備と人件費の削減を希望する企業との利益が一致した.近年では,コンピューターによる医薬品候補物質の構造式を観るだけで催奇形性を持つかを検索できるシステムやトキシコゲノミクスのようにDNAチップを用いて遺伝子に変化を与える化合物の割り出しを瞬時に多サンプルを処理できる机上の試験系が全盛期に入りつつある.この中で生殖発生毒性試験だけはヒト臨床試験は行えず,奇形生成に関与する遺伝子の同定もわずかであることからDNAチップを作成して遺伝子への影響は判定しにくい.そこで,生体内(子宮内)になるべく近い環境で,簡易的で迅速に試験できるin vitroの試験系を模索した.その結果,(1)ES細胞を用いた方法,(2)マイクロマスカルチャー,(3)哺乳類胎児培養法の3方法が提案された.我々はこの3種の方法を精査して検討を重ねた結果,(1)と(2)は細胞培養で重層化しているとはいえ二次元レベルであるのに対して,(3)胎児培養は唯一の三次元レベルの個体培養である.しかも,外表部分の形態形成だけでなく内臓,脳,神経,胎盤の形態形成も実施され,形だけでなく,その生理的,生化学的機能も成長するとあって,妊娠の全期間の培養は無理でも器官形成期に絞り込んで発生毒性試験の代替化試験にならないかを検討したので報告する.
著者関連情報
© 2006 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top