日本薬理学雑誌
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特集:薬理作用の予測法におけるIn vitro試験法の有用性と限界
電子スピン共鳴(ESR)法を用いた医薬品の脳疾患への有効評価
池田 幸穂
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2006 年 128 巻 5 号 p. 298-302

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抄録

活性酸素,フリーラジカルが脳血管障害,頭部外傷をはじめとして多くの脳疾患の病態に関与していることが指摘されている.多くの脳保護療法が開拓されているが,臨床に還元できるものは,いまだ十分でないのが現状であろう.その中にあって,活性酸素消去剤,フリーラジカルスカベンジャーが注目されている.本報告では,現在使用されている脳疾患に関与する薬剤の中に活性酸素消去能を有するものがあり,薬理作用の多面性に活性酸素消去能,フリーラジカルスカベンジャーの切り口から再評価する重要性を指摘したい.電子共鳴スピン(ESR)法は,フリーラジカルを検出する最も信頼性に富む方法である.In vitro ESRとin vivo ESRよる解析が可能になりつつある.In vitro ESR法は,種々の薬剤の薬理作用の中で,活性酸素・フリーラジカル消去能を検討することが可能である.Superoxide radical, hydroxyl radical, singlet oxygen, nitric oxide (NO) radicalの消去能について,それぞれ特異的なspin trapping剤を用いることにより検出が可能となっている.今回,臨床応用されているEdaravone,L-histidine,頭痛・片頭痛治療薬,静脈麻酔薬,ホスホジエステラーゼIII阻害薬,さらに実験的脳外傷モデルにおける損傷脳の活性酸素・フリーラジカル消去能についてin vitro ESR法を用いて検討した.今後,多くの医薬品の開発・検討にあたって活性酸素・フリーラジカル消去能の視点から,in vitro ESR法をもちいたin vitro試験法の有用性を強調したい.

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© 2006 公益社団法人 日本薬理学会
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