日本薬理学雑誌
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実験技術
小動物を用いた口腔内実験法
藤井 彰松本 裕子山根 潤一姜 桂珍
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2006 年 128 巻 5 号 p. 315-320

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抄録
ラット口腔内を用いた実験は,歯科医学関係のものが多いが,近年では薬物の副作用に唾液分泌の亢進または抑制などの項目も多く見られるようになり,一概に歯科医学の研究対象だけではなくなってきている.しかしながら,ラットの口腔内を対象にした実験を行う場合,ラットの口腔は微小であり,開口量は比較的大きいが操作が煩雑であるという欠点がある.そこで,実験を容易に行うための開口器を試作した.本器は口腔内が見やすく,しかも気道を圧迫する恐れのないもので,術中に死に至ることもなく,盲嚢(ポケット)内に結紮糸を留置し物理的刺激を加えることによる歯周炎の作成,歯周病原因菌の盲嚢内定着による歯周病の作成,歯の移動のためのデバイスの装着,口腔粘膜,歯肉,舌の特定部位への物質の投与等の実験に有用である.近年,歯周疾患に起因する全身疾患(心血管疾患,糖尿病,呼吸器疾患,骨粗鬆症等)や低体重児に関しても多く研究されるようになり,歯周疾患動物モデルの作成も重要な位置を占めるに至っている.また,骨粗鬆症による全身的骨脆弱化が歯の欠損と有意に相関があることが多く報告されている.しかしながら,骨粗鬆症における大腿骨と顎骨の関連については報告が少ない.本報告では,これらの実験を小動物を用いて行う場合に有用である小動物用開口器を開発し使用しているので紹介する.
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© 2006 公益社団法人 日本薬理学会
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