日本薬理学雑誌
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特集:パッチクランプ
脳スライス標本を用いたDual whole-cell patch clamp法によるシナプス電流の解析
小林 真之
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2006 年 128 巻 6 号 p. 375-380

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抄録

脳スライス標本を対象としたパッチクランプ法は,単一チャネルの特性からニューロンやシナプス・神経回路の特性まで,多岐にわたる電気生理学的特性を解明する最も有力な手法の一つである.最近では,顕微鏡の技術的進歩によって厚い脳スライス標本を対象とした記録も可能となり,従来あまり行われなかった成熟動物の解析が行われるようになってきた.また,ホールセル記録と細胞内カルシウム濃度の同時計測といった薬理学的手法やGFP導入動物からの記録およびsingle-cell PCRなど遺伝子工学的な手法などが次々と導入されている.これらの手法と同様に最近行われるようになってきたパッチクランプの手法の一つに,dual whole-cell patch clamp recording(paired recording)がある.Paired recordingは,複数の部位から同時に記録する手法であり,単一細胞から単一細胞へのシナプス伝達の特性を詳細に解析できる.また,電気的シナプスの解析や同一細胞における細胞体と樹状突起における活動電位やシナプス後電位の解析など,従来の手法では調べることができなかったことを観察可能にした.そこで本稿では,脳スライス標本におけるpaired recordingの概要と手技を紹介する.

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