日本薬理学雑誌
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総説
腎臓癌抑制遺伝子としてのコネキシン32の機能と効果
藤本 絵里子矢野 友啓上野 光一
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2007 年 129 巻 2 号 p. 105-109

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抄録

腎臓癌は手術療法以外の有効な治療法がないため,転移例や進行性腎臓癌の治療は免疫療法(IFN-α,IL-2)が中心である.しかし,その奏効率は概ね15%前後と低く,決して満足できるものではない.したがって,これまでとは全く機序を異にする治療法の開発が望まれている.そこで我々が注目したのがコネキシン(Cx)遺伝子である.Cx遺伝子は細胞特異的に発現し,ギャップ結合を形成,GJIC(gap junctional intercellular communication)の機能を介して細胞の分化誘導を行い,癌抑制遺伝子として機能していることが報告されている.また,近年,Cx遺伝子はGJICに非依存的な癌抑制作用も併せ持つことが明らかとなった.そこで我々は,Cx遺伝子の転移性腎臓癌における癌抑制機能を解明し,Cx遺伝子の癌抑制機能に立脚した転移性腎臓癌に対する新たな治療法確立の可能性を探ることを目的として,種々の検討を行った.その結果,腎臓癌発生に伴って特異的に発現抑制されるCx遺伝子として,Cx32が特定された.また,Cx32は,Src-STAT3-VEGF経路を阻害することにより腎臓癌の進行・転移に関わる悪性形質を制御し,転移性腎臓癌において癌抑制遺伝子として機能することが示唆された.さらに,腎臓癌におけるCx32の発現抑制は,Cx32遺伝子のプロモーター領域にあるCpGアイランドのメチル化に起因することが示された.以上のことから,Cx32遺伝子の導入またはDNA脱メチル化剤によるCx32の再発現は,転移性腎臓癌における新たな治療法の確立へとつながる可能性が示唆された.

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