日本薬理学雑誌
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特集:血管病の分子機構と新たな治療戦略
核酸医薬を用いた血管疾患に対する分子治療法
三宅 隆森下 竜一
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2007 年 129 巻 3 号 p. 158-162

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抄録
分子生物学の進歩に伴い血管疾患の病態解明が進み病変進行に関与する遺伝子・細胞内シグナルなどをターゲットにした分子治療も考案されてきた.そのなかで核酸医薬を使った治療法の開発も行われ,多くの遺伝子制御法が研究されている.核酸医薬は目的とするDNA・mRNAの相補的な塩基配列をもつ人工的に化学合成された核酸分子で高い特異性と容易な合成法が特徴である.動物実験で有用性が報告された主なものはアンチセンスとデコイで,臨床試験に進んでいる研究もあり次世代の治療薬として期待されている.対象疾患のひとつに血行再建後の内膜肥厚による再狭窄がある.アンチセンス法では細胞周期調節遺伝子をブロックして平滑筋細胞の増殖を抑制する方法がとられ,デコイ法では多くの細胞周期遺伝子群を制御している転写因子E2Fの活性を抑制する治療法が検討された.また病変進行に重要な因子である炎症を制御する転写因子NFκBに対するデコイも良好な内膜肥厚抑制効果を報告している.しかしE2Fデコイの臨床試験では有意な治療効果が見られず,さらに複数の現象を制御するためNFκBとE2Fを同時に抑制するキメラデコイの開発が行われている.また小径の動脈瘤もデコイ療法のターゲットとなっている.動脈瘤の進展には血管壁の炎症とMMPの発現による細胞外マトリックスの破壊が重要な機序になっている.これに関与する転写因子がNFκBとetsであり,これをデコイで同時に抑制することで動脈瘤の縮小効果が見られ,MMP分泌・炎症の抑制による細胞外マトリックスの破壊停止に加え,エラスチン・コラーゲンの合成抑制を解除し細胞外マトリックスを再生する効果が確認された.このように核酸医薬は血管疾患においても新規治療法となる可能性が示されている.
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© 2007 公益社団法人 日本薬理学会
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