日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
特集:血管病の分子機構と新たな治療戦略
血管内皮に備わっている血管新生制御の分子基盤
佐藤 靖史
著者情報
ジャーナル フリー

2007 年 129 巻 3 号 p. 163-166

詳細
抄録
血管新生は,促進因子と抑制因子のバランスによって制御されると考えられている.これまでに数多くの促進因子や抑制因子が同定されてきたが,血管新生調節の全容は未だ明らかとなっていない.特に血管新生抑制因子に関して,これまでに報告されてきた血管新生抑制因子は,主に血管内皮以外の細胞が産生され,血管新生刺激とは直接的には連動せず,血管新生のバリヤーとして作用するものが中心であった.ネガティブフィードバック調節は,生体に備わった基本的な調節機構である.我々は,血管新生促進因子の刺激を受けた血管内皮が,血管新生のネガティブフィードバック調節を担っている可能性を想定した.そこで,代表的な血管新生促進因子であるVEGFの刺激によって血管内皮に発現誘導される遺伝子の網羅的解析を行い,その中から生理活性を有する新規因子の単離・同定を試みた.その結果,血管内皮が選択的に産生し,しかも自身に対して選択的に作用して血管新生を抑制する新規因子を発見し,vasohibinと命名した.血管新生は,癌,網膜症,粥状動脈硬化などの病態と深く関わっている.そこで,それらの疾患に対するvasohibinの効果についての検討を進めているが,これまでの成績は,vasohibinが血管新生抑制因子として,それら血管新生関連疾患へ治療応用可能であることを示している.
著者関連情報
© 2007 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top