日本薬理学雑誌
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治療薬シリーズ(15)
排尿障害治療薬の現状と問題点
関 成人
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2007 年 129 巻 5 号 p. 368-373

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抄録

排尿障害は蓄尿(尿をためる)障害と排出(尿を出す)障害に大別される.蓄尿障害には排尿筋の収縮を抑制する薬物(抗コリン薬や平滑筋弛緩薬)あるいは膀胱出口部抵抗を増強する薬物(α1およびβ2受容体作動薬)が用いられ,排出障害には排尿筋収縮を増強する薬物(コリンエステラーゼ阻害薬など)ないし膀胱出口部抵抗を減弱させる薬物(α1遮断薬や抗男性ホルモン薬)が適用される.しかし閉塞性疾患(前立腺肥大症など)と合併する過活動膀胱に代表される,蓄尿および排出障害が混在する病態における抗コリン薬の有用性は十分確立されておらず,その使用は慎重に行う必要がある.排尿障害の薬物治療における問題点としては,排尿筋収縮力障害に対する有効な薬物に乏しいことと,有病率の高い過活動膀胱に対する第一選択薬である抗コリン薬の有害事象が挙げられ,抗コリン作用とは異なる作用機序を有する治療薬物の臨床応用や開発が進められている.

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© 2007 公益社団法人 日本薬理学会
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