抄録
神経疾患による睡眠障害は,脳内病変により睡眠と覚醒をコントロールする神経機構の障害,呼吸筋筋力低下や不随意運動といった神経症状,治療薬に起因するもの,疾患に対する不安などの心理的要因が組み合わさって生じる.レム睡眠行動障害はパーキンソン病,レビー小体病,多系統萎縮症の前駆症状のことがある.筋ジストロフィー症ではレム睡眠時の低呼吸が呼吸不全の初発症状となる.筋萎縮性側索硬化症では肺胞低換気が主症状で,進行に伴って睡眠呼吸障害が生じる.各種神経疾患の睡眠障害の発生機序を理解することで,初めて適切な治療が可能となる.