日本薬理学雑誌
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総説
最近のアレルギー研究の進歩
稲垣 直樹
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2008 年 131 巻 1 号 p. 22-27

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抄録

近年,アレルギー疾患患者の数は増加の一途をたどっており,アレルギーを克服するためのより確実な戦略の構築が望まれている.自然免疫の機構についての解析が飛躍的に進み,微生物産物を認識する受容体および細胞内シグナル伝達経路が明らかになってきた.自然免疫の機構は獲得免疫の誘導にも役割を演じることから,アレルギー克服の手がかりが得られる可能性を有する.アレルギー疾患は背景にTh2細胞優位なTh1/Th2バランスを有するとされており,バランスを矯正することがアレルギー克服につながると考えられる.また,制御性T細胞の誘導あるいは移入が免疫応答の過剰発現であるアレルギーの制御に有用であると推定される.アレルギーの発症,進展,増悪には種々の遺伝因子が関与するが,遺伝因子の発現制御もアレルギー克服に役立つと思われる.一方,強力なアレルギー性炎症抑制効果を発揮するステロイドなど,既存の薬物の効果的な使用方法も検討されている.

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© 2008 公益社団法人 日本薬理学会
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