日本薬理学雑誌
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実験技術
睡眠障害モデル動物を用いた睡眠薬の薬効評価
四宮 一昭武田 康宏亀井 千晃
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2008 年 131 巻 1 号 p. 33-36

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抄録
ベンゾジアゼピン系および非ベンゾジアゼピン系睡眠薬は,医療現場で代表的な睡眠薬として繁用されており,それらの効果については数多くの報告がある.しかし,実験動物で,これらの薬物の薬理作用を検討した成績の多くは,健常なげっ歯類の動物を用いたものである.健常なげっ歯類動物の睡眠時間帯,すなわち昼間では,覚醒レベルが低いので睡眠薬の薬効評価に適しているとは考えられない.そこで,著者らは,ラットを用いて睡眠薬の薬効評価を行う上で有用な睡眠障害モデルを作製した.実験方法としてはラットをペントバルビタールで麻酔し,前頭葉皮質および頸部筋に慢性電極を埋め込んだ.術後1週間経過した後,実験に用いた.睡眠障害モデルは,底から7 cmの所に幅3 mmのステンレス製グリッドを2 cm間隔で取り付け,その下に水を張った観察箱にラットを置くことにより作製した.脳波および筋電図の測定は,ラットを無麻酔,無拘束の状態で,音を遮断したシールドボックス内に入れ,9時から15時までの6時間行なった.測定した脳波および筋電図の解析は,睡眠解析装置Sleep Sign Ver.2.0を用いて行なった.観察箱の底に水を張ったグリッド上に置いて測定したラットは,木屑上に置いて測定したラットと比べて,有意な睡眠導入潜時の延長,覚醒時間の増加,NREM睡眠(ノンレム睡眠)およびREM睡眠(レム睡眠)時間の減少を示した.また,木屑上に置いた場合と比べて,底に水を張ったグリッド上にラットを置いた場合では,ベンゾジアゼピン系および非ベンゾジアゼピン系睡眠薬の催眠作用を,より感度良く検出できた.これらの成績から,本睡眠障害モデルラットは,薬物の催眠作用を評価する上で有用な動物モデルであると考えられる.
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© 2008 公益社団法人 日本薬理学会
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