日本薬理学雑誌
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総説
各種脂肪酸の生理・薬理機能の多様性
奥山 治美橋本 道男伊藤 幹雄徳留 信寛島野 仁板倉 弘重
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2008 年 131 巻 4 号 p. 259-267

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抄録
過去半世紀の食習慣の変化は,健康寿命を延ばす上で十分に寄与したと思われる.しかし,多種の癌の死亡率増加やアレルギー・炎症性疾患の増加,行動パターンの変化なども伴っていた.これらの変化に脂質栄養が深く関わっていると考えられているが,従来の“植物油を善玉とし,動物性脂肪とコレステロールを悪玉とする栄養指導”は,むしろ心疾患を増やし,癌死亡率,総死亡率を上げる危険なものであった.短期間の臨床試験の結果を長期の慢性疾患の予防に直接当てはめてしまったこと,家族性高コレスロール血症のような遺伝的素因を持つ人の多い集団の結果を,一般集団にまでそのまま演繹してしまったこと,疾病と相関の高い因子を危険因子とし,因果関係を考慮することなく,その因子を減らす(低下させる)手段をとってきたことなど,考えるべきことが多い.本総説では,各種脂肪酸が脳機能,メタボリックシンドローム・糖尿病,癌,動脈硬化性疾患,などに及ぼす多様な影響について,基礎・臨床面の最新のデータを紹介しながら,心身の健康増進に寄与しうる脂肪酸のバランスについて解説している.
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© 2008 公益社団法人 日本薬理学会
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