日本薬理学雑誌
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特集:健康食品の薬理学―その基礎研究から起業独立まで
植物性エストロゲンのカテコールアミン生合成・分泌への影響
柳原 延章豊平 由美子上野 晋筒井 正人篠原 優子劉 民慧
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2008 年 132 巻 3 号 p. 150-154

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抄録

私達の食生活において摂取する食品の中には多くの植物性エストロゲンが含まれる.例えば,大豆食品のダイゼインや赤ワインのレスベラトロールなどがそうである.ここでは,植物性エストロゲンによる神経伝達物質のカテコールアミン(CA)動態に対する影響について紹介する.実験材料としては,中枢ノルアドレナリン(NA)神経や交感神経系のモデルとして広く利用されている培養ウシ副腎髄質細胞を用いた.植物性エストロゲンのダイゼインやレスベラトロールおよび女性ホルモンの17β-estradiol(17β-E2)は,チロシンからのCA生合成を促進し,同時にチロシン水酸化酵素を活性化した.さらに,細胞膜を通過出来ないウシ血清アルブミン(BSA)を結合させた17β-E2-BSAも17β-E2と同様に促進効果を示した.これら植物性エストロゲン等によるCA生合成促進作用は,エストロゲンの核内受容体阻害薬によって抑制されなかった.また,高濃度のレスベラトロールやダイゼインは,生理的刺激のアセチルコリン(ACh)によるCA分泌や生合成の促進作用を抑制した.一方,副腎髄質より分離調整した細胞膜は,17β-E2に対して少なくとも2つの特異的結合部位(高親和性と低親和性)の存在を示し,高親和性の17β-E2結合はダイゼインにより濃度依存的に抑制された.以上の結果から,植物性エストロゲンのダイゼインおよびレスベラトロールは,細胞膜エストロゲン受容体を介してCA生合成を促進するが,高濃度では逆にACh刺激によるCA分泌や生合成を抑制することが示唆された.

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© 2008 公益社団法人 日本薬理学会
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