日本薬理学雑誌
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132 巻 , 3 号
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特集:健康食品の薬理学―その基礎研究から起業独立まで
  • 大澤 俊彦
    2008 年 132 巻 3 号 p. 140-144
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/12
    ジャーナル フリー
    機能性食品評価に,「バイオマーカー」を用いて簡便にかつ定量的に測定し,個人個人に適したオーダーメイド食品を開発することを目的に研究を進めた.その方法は,ヒトの一滴の血液や唾液,尿を対象に,疾患予防バイオマーカーや酸化ストレスバイオマーカーに特異的なモノクローナル抗体を,スライドガラス上にスピンコートされたアゾポリマーに光照射によりインプリンティングすることで「抗体チップ」を作製し,化学発光で未病診断と共に食品機能性の評価を測定した.特に,「メタボリックシンドローム」診断の重要なバイオマーカーとして注目されている肥満にかかわるサイトカインなどとともに,酸化ストレスの初期状態で発現するバイオマーカーに特異的な「モノクローナル抗体」を用いた.さらに,抗酸化評価法の公定法を設定する目的で,Antioxidant Unit研究会(http://www.antioxidant-unit.com/index.htm)を創設したので,併せて紹介する.
  • 立花 宏文
    2008 年 132 巻 3 号 p. 145-149
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/12
    ジャーナル フリー
    (-)-Epigallocatechin-3-gallate(EGCG)は他の茶カテキンと比較して多彩かつ強力な生理活性を示すとともに,茶以外の植物には見出されていないことから緑茶の機能性を特徴づける成分である.ここでは,EGCGの生理活性を仲介する細胞膜上の受容体(緑茶カテキン受容体)として筆者らが同定した67 kDaラミニンレセプター(67LR)を介した作用とその発現機序(緑茶カテキンシグナリング)について紹介する.67LRはEGCG受容体として,EGCGの細胞増殖抑制作用,多発性骨髄腫細胞に対するアポトーシス誘導作用,好塩基球におけるヒスタミン放出阻害作用や高親和性IgE受容体発現低下作用を仲介する.EGCGによる細胞増殖抑制作用には,ミオシン軽鎖のリン酸化レベルの低下とそれを触媒するミオシン軽鎖ホスファターゼの活性調節サブユニットMYPT1の活性化が関与すること,また,こうした作用は67LRのノックダウンにより阻害されることから,67LRからMYPT1の活性化につながるシグナル伝達経路の存在が示唆された.そこで本経路をつなぐ分子を検討し,eukaryotic elongation factor 1 alpha(eEF1A)を同定した.一方,67LR,eEF1A,MYPT1の各分子をそれぞれノックダウンしたマウスメラノーマ細胞を移植した全てのマウス腫瘍モデルにおいて,経口投与されたEGCGによる腫瘍成長抑制作用は消失した.以上の結果から,これらの分子がEGCGの抗がん活性を伝達する分子として働くことが示された.
  • 柳原 延章, 豊平 由美子, 上野 晋, 筒井 正人, 篠原 優子, 劉 民慧
    2008 年 132 巻 3 号 p. 150-154
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/12
    ジャーナル フリー
    私達の食生活において摂取する食品の中には多くの植物性エストロゲンが含まれる.例えば,大豆食品のダイゼインや赤ワインのレスベラトロールなどがそうである.ここでは,植物性エストロゲンによる神経伝達物質のカテコールアミン(CA)動態に対する影響について紹介する.実験材料としては,中枢ノルアドレナリン(NA)神経や交感神経系のモデルとして広く利用されている培養ウシ副腎髄質細胞を用いた.植物性エストロゲンのダイゼインやレスベラトロールおよび女性ホルモンの17β-estradiol(17β-E2)は,チロシンからのCA生合成を促進し,同時にチロシン水酸化酵素を活性化した.さらに,細胞膜を通過出来ないウシ血清アルブミン(BSA)を結合させた17β-E2-BSAも17β-E2と同様に促進効果を示した.これら植物性エストロゲン等によるCA生合成促進作用は,エストロゲンの核内受容体阻害薬によって抑制されなかった.また,高濃度のレスベラトロールやダイゼインは,生理的刺激のアセチルコリン(ACh)によるCA分泌や生合成の促進作用を抑制した.一方,副腎髄質より分離調整した細胞膜は,17β-E2に対して少なくとも2つの特異的結合部位(高親和性と低親和性)の存在を示し,高親和性の17β-E2結合はダイゼインにより濃度依存的に抑制された.以上の結果から,植物性エストロゲンのダイゼインおよびレスベラトロールは,細胞膜エストロゲン受容体を介してCA生合成を促進するが,高濃度では逆にACh刺激によるCA分泌や生合成を抑制することが示唆された.
  • 山國 徹, 中島 晶, 大泉 康
    2008 年 132 巻 3 号 p. 155-159
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/12
    ジャーナル フリー
    私たちはアルツハイマー病(AD)の新しい予防法および原因療法の開発を目指して,ADの予防・治療効果を示す天然薬物を探索する研究を進めてきた.その結果,新しい抗認知症作用を有する天然薬物として,生薬陳皮(AURANTII NOBILIS PERICARPIUM)に含まれる,分子量402.39のポリメトキシフラボン,nobiletinを発見することに成功した.Nobiletinは,ADの原因物質のAβを脳室内に注入した急性ADモデルラットにおいて記憶障害改善作用を示し,Aβ1-40およびAβ1-42を過剰発現するアミロイド前駆体タンパク質トランスジェニックマウス(APP-SL7-5)において脳内のAβの蓄積を抑制し,Aβ誘発性記憶障害を改善させた.また,本天然薬物は,中枢コリン作動性神経の変性を伴う嗅球摘出誘発性記憶障害モデルマウスの神経変性を抑制し,記憶障害を改善する作用を示した.さらに,N-methyl-D-aspartate受容体遮断薬(MK-801)誘発性記憶・学習障害マウスにおいて,海馬でのERKの活性化により,MK-801誘発性記憶・学習障害を改善した.他方,培養ラット海馬ニューロンを用いてnobiletinの記憶障害改善作用のメカニズムを解析した結果,nobiletinが,培養海馬ニューロンにおいて,AMPA受容体の細胞膜への移行やPKA/ERK/CREBシグナル伝達を促進し,またAβによるグルタミン酸誘発性PKA/CREBシグナル伝達の阻害を抑制することが明らかとなった.このようなユニークな薬理作用を有するnobiletinは,種々の食用柑橘類果実に含まれており,それを応用した機能性食品の開発が可能になれば,ADなどの認知症の予防・改善に有効な代替療法が確立できると期待される.
  • 山本 格
    2008 年 132 巻 3 号 p. 160-165
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/12
    ジャーナル フリー
    ビタミンC(アスコルビン酸)は,酸素および活性酸素あるいは,その反応物質と容易に化学反応(酸化還元反応)を起こし,相手を還元することがその役割である.人類は1200~800万年前に進化の過程でその合成能を失い,ビタミンCを外部から摂取しなければ生命維持ができなくなった.その結果,人類は酸素に弱いビタミンCを如何に酸化分解されていない状態のままで摂取し機能を発揮させるかという切実で大きな課題と向き合って来た.1989年,我々は安定・持続型のビタミンC誘導体(AA-2G)の創製に成功した.AA-2Gは1994年には,医薬部外品(美白化粧品)として,2004年には食品添加物として厚生労働省によりその使用が許可されるに至った.さらに,1999年には親油性ビタミンC誘導体(6-Acyl-AA-2G)の合成に成功し,現在その工業的生産法と用途開発が進行している.近年,健康や食の安全,環境保全への意識が高まる中,国立大学の特殊行政法人化に伴い,大学発ベンチャーが奨励される状況となってきた.それを受けて,AA-2Gの発明者とその仲間は,種々の有用な新規ビタミンC誘導体,ならびに疾病予防を目的とした新規機能性物質の研究,リラクゼーションを目的とした研究開発,商品開発ならびに販売事業を行うべく起業(2004年9月)し,ベンチャー企業支援施設である「岡山リサーチパークインキュベーションセンター,ORIC」に入居し活動を開始した.本稿ではビタミンC誘導体の発明から大学発ベンチャーの立ち上げと保健機能性食品の誕生までの道程を述べる.
総 説
  • 丸山 彰一
    2008 年 132 巻 3 号 p. 166-172
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/12
    ジャーナル フリー
    現在,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)対策が世界的に精力的に進められている.わが国でも日本腎臓病学会が中心となり,関連する各学会とも連携しながらCKD対策に取り組んでいる.CKDに対する理解を深め適正な治療をより多くのCKD患者に施行するために,昨年CKD診療ガイドが作成され公開された.本稿ではこのガイドラインに沿い,CKDに対する治療薬につき概説する.CKDは進行すれば透析医療を要する末期腎不全に至るというのみならず,比較的早い段階から心血管疾患を合併する危険が高いことが明らかとなってきた.よってCKD治療の第一の目標は末期腎不全への進展を阻止することであり,第二の目標はCVD(caldiovascular disease:心血管系疾患)の発症を抑制することとなっている.このふたつの目標を達成するためには,一般内科医(かかりつけ医)と腎臓内科専門医が連携して集学的治療を行うことが求められる.まずは生活習慣の改善や食事療法を十分行う必要がある.そして,多くの場合は薬物療法も並行して行うこととなる.薬物治療としては,レニン-アンジオテンシン-アルドステロン(RAA)系抑制薬を中心とした降圧治療が重要な位置を占める.RAA系抑制薬は尿蛋白を減少させる目的でも積極的に用いられる.さらに,スタチンを中心とした脂質代謝異常症に対する治療,エリスロポエチン製剤を用いた適正な貧血治療,経口炭粉吸着薬を用いた尿毒症治療などが提唱されている.糖尿病は透析導入患者の40%を占め,慢性糸球体腎炎の25%を大きく上回っている.血糖コントロールを中心とした糖尿病対策もCKD対策の大きな柱のひとつである.また,CKDにおいては特に腎排泄性の薬剤や腎障害を来しうる薬剤を使用する際には特別の注意が必要である.CKD診療ガイドが示されたことにより,CKD治療に対する大きな方向性は示された.しかし,具体的な治療方法に関しては依然多くの課題が残されている.CKD治療に関しては,今後さらなる研究が必要である.
治療薬シリーズ(29) 標的分子薬-2
  • 中島 秀典
    2008 年 132 巻 3 号 p. 173-176
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/12
    ジャーナル フリー
    微生物が産生する生理活性物質,醗酵天然物は,人間に時間を飛び越えていきなり生命機構の本質を教えてくれることがある.なぜなら,そのような化合物は,微生物が地球環境の変化を予想して生き残るために,未知の他の生物あるいは環境因子との相互作用を効率的かつ効果的に実現する手段として合目的的に生産されているからである.それらが他の生物に作用する場合,必ず微生物から哺乳動物まですべての生物に共通に保存されている標的タンパク質に作用する.従って,醗酵天然物は通常の帰納的な生物学の解析手法では解明困難な生命現象の課題を解決するポテンシャルを有している.ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬は,有用な医薬品を人類に提供しただけでなく,永らく概念では理解されていても,そのダイナミズムが不明であった転写調節機構という生物学の課題を一気に解明したのである.
  • 戸井 雅和
    2008 年 132 巻 3 号 p. 177-179
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/12
    ジャーナル フリー
    抗HER2療法の臨床導入,分子プロファイルに基づく治療設計,個別化の概念の導入によって,乳がんの治療は変わった.それまでともすればtry and errorに頼ってきた新規治療法開発は,標的を定め,対象を選び,標的療法を導入し予後の改善を図る,という治療戦略の有用性が立証されたことにより,標的療法と治療個別化を基本コンセプトとするようになった.さらには,集学的治療の概念の枠組みの中においてもそのコンセプトは十分成立することもわかってきた.標的療法,個別化コンセプトを集学的に用いることで,最大限の抗腫瘍効果を引き出し,毒性を抑制することが可能になってきている.今後も腫瘍特性に基づいた治療法開発の方向性は変わらないと考えるが,治療効果の発現には腫瘍細胞の特性だけでなく,宿主個別の要因が密接に関わることも最近指摘されるところであり,宿主条件を加味した個別化治療戦略というものがさらに求められている.
新薬紹介総説
  • 片山 泰之, 井上 明弘, 堀籠 博亮
    2008 年 132 巻 3 号 p. 181-188
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/12
    ジャーナル フリー
    インスリン デテミル(遺伝子組換え)(販売名:レベミル®注300フレックスペン®,レベミル®注300,以下「デテミル」)は,脂肪鎖を付加しアルブミンとの結合を利用することにより,作用の持続化を図った新規持効型溶解インスリンアナログ注射製剤である.非臨床試験では,デテミルはヒトインスリンの分子薬理学的作用を有することが示された.また,NPH(neutral protamine Hagedorn)ヒトインスリン(以下「NPH」)よりも緩徐で持効型の薬理作用を有することが示唆された.デテミルとヒトインスリンの代謝パターンは類似していると考えられ,ヒトインスリンとデテミルの間に安全性に影響するような差異は認められなかった.臨床試験では,デテミルは,NPHと比較して,よりピークが少なく,より長時間(24時間)に渡り効果が持続することが確認された.国内における第III相臨床試験は,1型および2型糖尿病患者を対象としたBasal-Bolus療法,小児1型糖尿病患者を対象としたBasal-Bolus療法,2型糖尿病患者を対象とした経口血糖降下剤との1日1回併用治療の3試験が実施され,NPHに対する非劣性,空腹時血糖の低下,空腹時血糖値の個体内変動の減少,夜間低血糖の減少といった特徴が認められた.さらに,既存のインスリン治療では得られない体重増加抑制効果が認められたため,大いに臨床的メリットが期待される新規インスリンアナログ製剤である.
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