日本薬理学雑誌
Online ISSN : 1347-8397
Print ISSN : 0015-5691
ISSN-L : 0015-5691
治療薬シリーズ(29) 標的分子薬-2
ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬の探索研究経緯
中島 秀典
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 132 巻 3 号 p. 173-176

詳細
抄録
微生物が産生する生理活性物質,醗酵天然物は,人間に時間を飛び越えていきなり生命機構の本質を教えてくれることがある.なぜなら,そのような化合物は,微生物が地球環境の変化を予想して生き残るために,未知の他の生物あるいは環境因子との相互作用を効率的かつ効果的に実現する手段として合目的的に生産されているからである.それらが他の生物に作用する場合,必ず微生物から哺乳動物まですべての生物に共通に保存されている標的タンパク質に作用する.従って,醗酵天然物は通常の帰納的な生物学の解析手法では解明困難な生命現象の課題を解決するポテンシャルを有している.ヒストン脱アセチル化酵素阻害薬は,有用な医薬品を人類に提供しただけでなく,永らく概念では理解されていても,そのダイナミズムが不明であった転写調節機構という生物学の課題を一気に解明したのである.
著者関連情報
© 2008 公益社団法人 日本薬理学会
前の記事 次の記事
feedback
Top