2008 年 132 巻 4 号 p. 227-235
エプレレノンは,選択的アルドステロンブロッカーであり,海外において高血圧および心不全に対する治療薬として開発され,本邦では高血圧症に対する治療薬として2007年に承認された.エプレレノンは鉱質コルチコイド受容体に対するアルドステロンの結合を抑制し,in vitroにおける鉱質コルチコイド受容体への親和性はスピロノラクトンの1/20程度であったが,in vivoではほぼ同程度であった.また,エプレレノンの鉱質コルチコイド受容体に対する選択性は,スピロノラクトンと比較してより高く,性ホルモン関連有害事象が少ないことが期待された.エプレレノンの降圧作用は,食塩感受性のDahl食塩負荷ラットおよびアルドステロン/食塩負荷ラットにおいて確認され,食塩非感受性の脳卒中易発症性自然発症高血圧ラット(SHRSP)においても認められた.さらに,エプレレノンは,高血圧に伴う様々な臓器での血管損傷を抑制する,いわゆるend-organ protection作用を有していることが確認された.エプレレノンの降圧作用には,腎での作用の他,アルドステロンによる血管の機能変化および血管損傷を抑制することによる血圧調節能の維持,中枢でのアルドステロンの作用を抑制することによる血圧上昇の抑制,およびアルドステロンによるnon-genomic actionの抑制等が寄与している可能性が考えられた.臨床試験では,50~200 mgにおける降圧効果が確認され,忍容性が高いこと,他の降圧薬と比較して同等以上の降圧作用を発現し,また,併用によりさらに血圧を安定させうることが示された.加えて,臓器保護作用を有しており,性ホルモン関連有害事象の発現頻度が低いことも示された.