2008 年 132 巻 5 号 p. 292-296
わが国における寄生虫病・熱帯病治療の問題点は,国内承認薬が少なく,保険適用の効能の範囲も狭いことである.たとえば,重要な熱帯感染症であるマラリアに対してはメフロキンとキニーネ末が承認されているが,重症マラリアには対応できず,三日熱マラリアと卵形マラリアに必要な根治療法もおこなえない.また,近年増加傾向にある赤痢アメーバ症,国内の寄生虫病で比較的多い幼虫移行症に有効な薬剤は,承認されてはいるが効果効能では適用外である.トキソプラズマ症も国内承認薬だけでの治療は困難である.このような問題はあるが,「輸入熱帯病・寄生虫症に対する稀少疾病治療薬を用いた最適な治療法による医療対応の確立に関する研究」班(略称:熱帯病治療薬研究班)が,薬剤の輸入・保管・治療対応に関する研究活動を行っており,国内未承認薬での治療が可能になっている.