日本薬理学雑誌
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特集 医薬品開発における薬物性QT延長症候群回避のための基本戦略
薬物性QT延長症候群の患者背景:医薬品開発および臨床試験における留意点
加藤 貴雄
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2009 年 133 巻 1 号 p. 19-21

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抄録

薬物使用中に心電図QT/QTc間隔が異常に延長する病態を薬物性QT延長症候群という.心臓薬のみならず非心臓薬でも起こりうることが指摘され,その一部はtorsades de pointes型心室頻拍などの致死性不整脈を惹起することが報告されて以来,臨床の現場で広く注意が喚起されるに至っている.一方で,新たに開発されてくるさまざまな薬剤に関しても,安全性重視の観点から,薬剤の薬理学的作用によってたとえ軽度であってもQT/QTc間隔を延長させることがないかを,厳密な方法でかつ客観的に証明することが国際調和会議の中で求められるようになってきた.すなわち,新規薬剤開発のための臨床試験計画において,詳細な心電図記録・計測・評価システムを含む試験プロトコールを立案することが不可欠である.しかし実際の臨床においては,QT/QTc間隔をはじめとする種々の心電図指標値は,当該薬剤の薬理作用のみならず他のさまざまな患者要因の影響を受けて大きく変動する.薬剤の持つ純粋なQT延長作用の有無を正確に評価することのできる,よい試験プロトコールを立案するためには,対象薬剤の薬理作用を詳細に把握しておくことが肝要であるのは言うまでもなく,対象患者のさまざまな臨床背景を充分に考慮に入れることが重要である.

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© 2009 公益社団法人 日本薬理学会
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