日本薬理学雑誌
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特集:TRPチャネルタンパク質の新たな機能と病態生理
受容体・機械刺激協働による心血管Ca2+流入チャネルTRPC6の活性化増幅機構
—PLC/DAG系とPLA2/ω-hydroxylase/20-HETE系のクロストーク—
井上 隆司森 誠之瓦林 靖広菅 忠
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2009 年 134 巻 3 号 p. 116-121

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抄録

TRPタンパク質は電位変化以外の種々の物理化学刺激で活性化されるCa2+透過型非特異的陽イオンチャネルであり,感覚伝導を始め種々の生体機能とその破綻による病態に関与していると推測されている.最近の研究成果から,TRPタンパク質(チャネル)のうちの多くが,低浸透圧,ずり応力などの機械刺激で活性化されることが明らかとなってきた.興味深いことに,そのうちの多くが,血圧・血流変化等の機械刺激に暴露されている心血管系に発現している.しかし,これらの機械刺激感受性TRPチャネルがどのような分子機序によって活性化されるのか不明であった.本稿では,心血管系全般に亘って高レベルで発現し,血管緊張度,心血管のリモデリング等に密接に関与していることが明らかとなってきたTRPC6タンパク質に焦点を絞り,このチャネルタンパク質が受容体刺激,機械刺激の協働作用によって極めて効率的に活性化され,その分子機序として,PLC/ジアシルグリセロール(DAG)系とPLA2/ω-hydroxylase/20-HETE系のクロストークが重要であるという我々の仮説を中心に,心血管TRPタンパク質を巡る機械情報伝達のトピックスを紹介する.

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© 2009 公益社団法人 日本薬理学会
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