2009 年 134 巻 3 号 p. 149-157
ミノドロン酸水和物(以下,ミノドロン酸:リカルボン®錠1 mg/ボノテオ®錠1 mg)は,骨粗鬆症を適応症として2009年4月より日本国内で発売された第三世代のビスホスホネート系薬剤である.ミノドロン酸は,日本国内で創製され,既存薬に比べ骨吸収抑制作用の力価が高いことが特長である.また,日本人骨粗鬆症患者において,プラセボに対する椎体骨折防止効果が検証された初めてのビスホスホネート系薬剤であり,相対リスクを2年間で58.9%減少させた.非臨床試験において,ミノドロン酸は,投与後,特異的に骨に集積し,骨吸収の過程で破骨細胞により放出される酸により骨から遊離し,破骨細胞に選択的に取り込まれる分布経路が示唆された.また,ミノドロン酸は,メバロン酸代謝経路におけるファルネシルピロリン酸(FPP)合成酵素を強力に阻害したことから,破骨細胞内で低分子量グアノシン三リン酸(GTP)結合タンパク質のゲラニルゲラニル化を抑制することで破骨細胞の機能を低下させ,その結果,骨吸収を強力に抑制するものと推察された.閉経後骨粗鬆症の病態モデルである卵巣摘出骨粗鬆症モデルにおける検討では,ミノドロン酸は,骨代謝マーカー,骨密度,骨梁構造および骨強度を既存薬よりも低用量で改善した.また,続発性骨粗鬆症モデルであるステロイド性骨粗鬆症モデルや不動性骨粗鬆症モデルにおいても,骨密度および骨強度を改善した.さらに,ミノドロン酸は,ビタミンK2および活性型ビタミンD3と併用した場合,これら薬物の作用を打ち消すことなく相加的に作用した.これら非臨床試験の結果より,ミノドロン酸は,骨粗鬆症病態において骨代謝回転の亢進を抑制することにより,骨密度の減少を抑制し,骨梁構造の破綻を阻止し,骨強度の低下を抑制したと考えられ,新規の骨粗鬆症治療薬になりうることが期待された.臨床試験において,後期第II相試験の成績から,ミノドロン酸の臨床推奨用量を1日1回,1 mgと判断した.その後,国内外で汎用されている既存薬のアレンドロネートを対照とし,腰椎骨密度を主評価項目とした第III相試験,およびプラセボを対照とし,椎体骨折の発生率を主評価項目とした第III相試験を実施した.これら2つの第III相試験で,ミノドロン酸は骨密度増加効果および骨折防止効果を示した.一方,安全性については,特段の問題は認めず,安全に長期投与可能な骨粗鬆症治療薬であることが示された.今後,ミノドロン酸は,強力な骨吸収抑制作用より骨粗鬆症患者の骨折防止に寄与し,骨粗鬆症治療の選択肢を広げるものと期待される.