アポトーシスによる心筋細胞の脱落が種々の心疾患,特に急性心筋梗塞あるいは心不全の形成あるいは病態増悪の過程に関与している可能性が示唆されている.たしかに培養心筋細胞においてはアポトーシスは実験的に比較的容易に誘導できる.しかしながら心不全を含め実際の心疾患における心筋細胞アポトーシスの直接証明である形態学的証拠は未だに示されていない.したがって急性心筋梗塞あるいは心不全における心筋細胞の抗アポトーシス治療の有効性は不明である.一方,心筋の間質細胞などの非心筋細胞は心筋梗塞巣(肉芽組織)において大量にアポトーシスで消失することがわかっている.かつ,このアポトーシスを阻害すると梗塞後慢性期の左室リモデリング,心不全が軽減されるため,将来大型梗塞後心不全予防法のひとつとなる可能性がある.