日本薬理学雑誌
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総説
アルツハイマー病の病態とバイオマーカー開発
荒井 啓行岡村 信行藁谷 正明古川 勝敏谷内 一彦工藤 幸司
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2010 年 135 巻 1 号 p. 3-7

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抄録

アルツハイマー病(AD)の根本治療薬の登場を目前にして,ADの診断と薬効評価パラダイムが,従来の認知機能検査ベースからバイオマーカーベースへと大きくシフトしようとしている.また,蓄積物質(病理像)を画像化する新しい分子イメージング技術が日米両国で開発されている.このような考えに立って米国で2005年から発案・開始されたプロジェクトが,Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative(ADNI)である.ADNIは米国,欧州,オーストラリアと本邦の世界4極で同一プロトコールを用いて実施される長期観察研究である.ADNI研究の目的は,①AD,軽度認知機能障害,正常高齢者において,MRIやPETなどの画像データの長期的変化に関する一定の基準値を作るための方法論を確立すること;②画像サロゲートマーカーの妥当性を証明するために臨床指標,心理検査,血液・脳脊髄液バイオマーカーを並行して収集すること;③AD根本治療薬の治療効果を評価するための最良の方法を確立すること,の3点である.2008年7月Japanese-ADNIで患者登録が開始された.蓄積物質をイメージングすることは究極のバイオマーカーとして,将来は発症前診断を可能にするかも知れない.製薬企業による根本治療薬開発との連動が不可欠である.

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© 2010 公益社団法人 日本薬理学会
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