2010 年 135 巻 2 号 p. 55-58
心房細動の薬物治療戦略にはリズムコントロールとレートコントロールがあるが,欧米でのいくつかの大規模臨床試験では,抗不整脈薬による洞調律維持が必ずしも予後改善につながらないことが示されている.それらの欧米臨床試験の結果を日本の心房細動治療指針に適用可能か否かを検討するために,J-RHYTHM試験が行われた.この試験によって,発作性心房細動に対してリズムコントロールを目的に適切な抗不整脈薬を使用すれば予後を悪化する事無く,QOLを維持することが出来ることが示された.しかしながら,持続性心房細動に対しては,欧米の臨床試験と同様にレートコントロールの方が望ましいことが示された.また,J-BAF試験では,持続性心房細動に対して有効な抗不整脈薬を用いてリズムコントロールが出来たとしても,その副作用発現には注意しなければならないことが明らかとなった.現在の心房細動の薬物療法には明らかに限界があり,副作用が無く有効性の高い心房細動治療薬の開発が望まれている.