抄録
PET(Positron Emission Tomography: 陽電子断層画像装置)は,生体内分子ターゲットを特異的に認識するポジトロン標識化合物の生体内動態・分布を非侵襲的に体外から計測する事で,生体内機能を画像化・定量化できる分子イメージング法として,実験動物を対象にした基礎研究からヒト患者を対象にした臨床研究まで,幅広く応用されてきた.例えば,がん細胞に高い集積を示すグルコースの類縁物質である[18F]FDGを用いた「がん検診」に活用されている.創薬研究の分野では,膨大な開発期間と費用を要する医薬品開発の効率化のため,これらのPETの優れた特性を利用しようという試みが,既に欧米では1990年代初頭から始まっており,この数年ようやく国内にも広がってきた.本稿では,中枢作動薬開発における疾患モデル動物を対象にした,前臨床段階におけるPET研究の有効性と課題について概説する.