日本薬理学雑誌
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特集 眼薬理学の最近の進歩
網膜循環改善薬の現状と将来
中原 努森 麻美坂本 謙司石井 邦雄
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2010 年 135 巻 4 号 p. 146-148

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抄録

緑内障および糖尿病網膜症は,後天性の失明や視力低下の原因として重要な位置を占めている.これら網膜疾患の発症および進行には,網膜循環障害が関与している.従って,網膜循環改善薬が有用な予防・治療薬になり得ると考えられるが,現在,網膜循環障害に適応を有する医薬品はカリジノゲナーゼのみである.その原因として,網膜循環に関するin vivo研究が少ないため,網膜循環調節機構の詳細が十分に解明されていないという事実を挙げることができる.そこで我々は,これまでに小動物用 in vivo 網膜血管径計測システムを独自に構築し,それを用いて正常および病態モデルラットにおける網膜循環調節機構に関する研究と,網膜循環改善薬の探索を行ってきた.その結果,一酸化窒素(NO)は,シクロオキシゲナーゼ-1(COX-1)由来のプロスタノイドを介して網膜血管を拡張させること,そして網膜血管の拡張性調節には cGMP よりも cAMP シグナル経路が重要な役割を演じていることを明らかにしてきた.このことは,網膜血管において cAMP を選択的に増加させる薬物が,網膜循環改善薬となる可能性があることを示唆している.

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© 2010 公益社団法人 日本薬理学会
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