抄録
たこつぼ型心筋症は,過度のストレスを受けることなどにより心尖部を中心に左室壁運動が低下する疾患だが,その発症機序は十分に解明されていない.我々は,雄性カニクイザルにエピネフリンの持続静脈内投与を2日(Day 1,Day 2)続けることで,Day 3には,「たこつぼ型」心筋症モデルの作製に成功した.慢性心不全に対して有効であるβ受容体遮断薬を単回投与(Day 3)することで,心筋症後の左室駆出率をより早く改善させ,心尖部に認めたエピネフリンによる心筋障害を軽減させた.Day 4の左心室心尖部では基部と比べて,エピネフリン投与で心不全関連遺伝子の増加,カルシウムシグナル関連遺伝子・ミトコンドリア機能関連遺伝子の減少傾向が見られ,β遮断薬による改善傾向を示す遺伝子を認めた.今回,サルのたこつぼ型心筋症モデルを確立した.このモデルは心不全に対するβ受容体遮断薬療法の薬理機序を明らかにする上で重要なツールとなると考えられる.