日本薬理学雑誌
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特集 循環器疾患治療薬の研究戦略
新規心房細動治療薬としての選択的アセチルコリン感受性K+チャネル遮断薬の有用性
橋本 哲郎
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2010 年 136 巻 2 号 p. 77-82

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抄録
心房細動は臨床で最も頻繁にみられる不整脈の1つであり,心原性脳梗塞,血栓塞栓症および心不全の重要な危険因子である.加齢とともに罹患率が増加することから,高齢化社会において対処が必要な疾患として認識されている.心房細動の薬物治療には刺激伝導抑制や有効不応期延長を引き起こすNa+チャネル遮断薬(I群抗不整脈薬)やK+チャネル遮断薬(III群抗不整脈薬)が用いられている.しかしながら,これら既存の薬剤は心房に作用して抗不整脈作用を示す一方,心室筋にも同時に作用するため,心収縮力低下作用や心室再分極遅延に基づく催不整脈作用などの副作用が課題となっている.特に,心室再分極相の延長に伴う催不整脈作用は心臓突然死を惹起する重篤な副作用として認識されている.また,これら既存の抗不整脈薬は発作性心房細動患者には比較的高い有効性を示すものの,持続性心房細動患者に対する有効性が低いことが知られており,治療満足度は高くない.そのため,より高い有効性と安全性を有する抗心房細動薬の開発が求められている.理想的な抗心房細動薬に求められる特性は,「心房選択的な作用」と「持続性心房細動に対する高い有効性」と考えられる.アセチルコリン感受性K+チャネル(IKAChチャネル)は心房に豊富に存在する一方,心室には存在しないことから,心房選択的な作用を有する抗心房細動薬のターゲット分子として期待されている.
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© 2010 公益社団法人 日本薬理学会
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