日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
ヒトGLP-1アナログ製剤リラグルチド(ビクトーザ®皮下注)の薬理学的特徴および臨床試験成績
杉井 寛松村 順子井上 明弘堀籠 博亮松崎 勝寛清水 あかね
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2010 年 136 巻 4 号 p. 233-241

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抄録

リラグルチド(遺伝子組換え)(販売名:ビクトーザ®皮下注)は,GLP-1[7-37]の34位をアルギニンに置換し26位リジンにN-パルミトイル-グルタミン酸を付加した,ヒトGLP-1アナログである.GLP-1は,主に下部小腸に分布するL細胞より分泌されるインクレチンホルモンであり,グルコース濃度依存的にインスリン分泌を亢進させ,効果的に血糖値を降下させる.しかしながら,GLP-1はDPP-4により速やかに分解されるため,消失半減期が非常に短い.それに対してリラグルチドは血漿タンパク質結合率が高く,注射部位からの吸収が緩徐で,DPP-4による代謝に対し安定であるため,長時間作用型の薬物動態および薬力学的作用プロファイルを示し,1日1回投与に適した薬剤といえる.リラグルチドは,非臨床薬理試験においてヒトGLP-1と同様の分子薬理学的作用を示し,安全性薬理試験および毒性試験では臨床上の安全性に影響するような所見は認められなかった.非臨床薬理試験および臨床薬理試験において,リラグルチドは長時間作用型の薬物動態および薬力学的作用を有することが示された.国内における第III相臨床試験は2型糖尿病患者を対象として実施した.グリベンクラミドを対照薬としてリラグルチド単独療法の有効性および安全性を検討した試験では,対照薬に対してHbA1Cを指標とした血糖コントロールの優越性,血糖プロファイルの改善,低血糖発現率の低値を示した.SU薬との併用療法におけるリラグルチドの有効性および安全性を検討した試験でもSU単独療法に対して,HbA1Cを指標とした血糖コントロールの優越性,血糖プロファイルの改善が示された.さらに膵β細胞機能関連パラメータを改善する上に,体重増加をきたさないなどの特徴も認められた.リラグルチドは低血糖や体重増加のリスクが低く,血糖コントロールを改善し,さらに膵β細胞機能指標を改善することから,今後の2型糖尿病治療に革新をもたらすと期待される.

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© 2010 公益社団法人 日本薬理学会
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