日本薬理学雑誌
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創薬シリーズ(5)トランスレーショナルリサーチ(7)
抗凝固薬ワルファリンのトランスレーショナルPK/PD研究
高橋 晴美
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2010 年 136 巻 4 号 p. 229-232

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抄録

抗凝固薬ワルファリン(WF)の臨床効果には大きな個人差が存在するため,至適投与量の設定がしばしば困難となる.多くの臨床試験により,WFの血中濃度はCYP2C9遺伝子変異により上昇し,一方感受性はVKORC1遺伝子変異により高くなることが判明している.アジア人や白人においては年齢や体重などの患者背景因子とCYP2C9VKORC1両遺伝子型によりWF維持量の個人差の60%程度まで説明可能となってきた.そのため米国FDAでは2007年にWF添付文書にCYP2C9VKORC1遺伝子情報をWF投与量の影響因子として追加した.しかし,INRに加えて両遺伝子検査を実施することの臨床的有用性は現在のところ確立していない.本稿ではWF導入時における両遺伝子検査の臨床的意義について,白人とアジア人を対象としたRetrospective試験,ならびにProspective試験結果について紹介したい.

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© 2010 公益社団法人 日本薬理学会
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