日本薬理学雑誌
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総説
抗がん剤による末梢神経障害の治療薬の現状
江頭 伸昭川尻 雄大大石 了三
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2010 年 136 巻 5 号 p. 275-279

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抄録

近年,がん化学療法の有用性が高まってきたが,タキサン系抗がん剤であるパクリタキセルや白金系抗がん剤であるオキサリプラチンは,末梢神経障害を高頻度で発現し,身体的苦痛から患者の生活の質(Quality of Life: QOL)を著しく低下させるだけでなく,がん治療の変更や中止を余儀なくさせることから,臨床上大きな問題となっている.無作為化二重盲検臨床試験において,オキサリプラチンの末梢神経障害に対しては,カルシウム/マグネシウム静脈内投与,グルタチオンおよびキサリプロデンの有用性が報告されているが,いろいろな理由により臨床現場ではほとんど用いられておらず,パクリタキセルの末梢神経障害に対しては明らかに有用な効果を示す薬物はない.抗がん剤による末梢神経障害動物モデルでは,パクリタキセルは坐骨神経の変性に伴い機械的アロディニアならびに低温知覚異常を発現する.オキサリプラチンは急性期より低温知覚異常を,その後遅発的に機械的アロディニアを発現するが,前者はオキサレート基で後者は白金を含む部分の化合物で発現される.今後は,末梢神経障害の発現機序を明らかにして,予防策や治療法の確立には発現機序に基づいた取り組みが重要である.

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© 2010 公益社団法人 日本薬理学会
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