日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
DPP-4阻害薬ビルダグリプチンの薬理学的特長と臨床効果
伊藤 立信輪島 輝明山口 正之三森 信幸関口 金雄
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2010 年 136 巻 5 号 p. 299-308

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抄録

エクア®はノバルティス ファーマ社で創製されたビルダグリプチンを有効成分とする新規経口糖尿病薬である.ビルダグリプチンはin vitroにおいて,組換えヒトdipeptidyl peptidase IV(DPP-4)に高い親和性で結合すると共に(Ki = 2~3 nM),ヒト血漿DPP-4を強力に阻害した(IC50 = 2.7 nM).2型糖尿病患者にビルダグリプチン(50 mg,1日2回)を反復投与すると,血漿DPP-4活性は24時間にわたって90%以上阻害され,活性型glucagon-like peptide-1(GLP-1)濃度が上昇した.2型糖尿病患者にビルダグリプチンを単回投与すると,インスリン分泌が亢進すると共にグルカゴン分泌が低下し,血糖値が低下した.しかし,血糖値が正常な健康被験者にビルダグリプチン(100 mg)を投与してもインスリン分泌の有意な亢進を認めず,また血糖値の有意な低下を認めなかった.2型糖尿病患者にビルダグリプチン(50 mg,1日2回)を反復投与すると,膵βおよびα細胞機能が改善すると共に,インスリン抵抗性が改善した.また,動物実験において,ビルダグリプチン(30または60 mg/kg)は膵β細胞の分化促進ならびにアポトーシスの抑制作用を示したことから,膵β細胞に対する保護作用が示唆された.ヒトにおける経口投与時のビルダグリプチンの吸収は速やかで,バイオアベイラビリティは良好であった(BA = 85%).ビルダグリプチンの投与後血漿中未変化体濃度は用量の増加に応じて上昇し,約2時間の半減期で消失した.ビルダグリプチンは臨床で併用が予想される様々な薬剤との薬物間相互作用が検討されているが,薬物動態への明らかな影響は認められなかった.2型糖尿病患者を対象に,HbA1c値の低下量を指標として臨床試験が実施された.ビルダグリプチン(10,25,50 mg,1日2回)の12週間投与では,用量依存性が確認された.ビルダグリプチン(50 mg,1日2回),またはボグリボースの12週間投与では,ビルダグリプチンの優越性が検証された.グリメピリドとの12週間併用投与では,プラセボに対するビルダグリプチン(50 mg,1日2回)の優越性が検証された.さらにビルダグリプチンの単独療法,もしくはグリメピリドとの併用療法の52週間投与では,長期投与時の安全性と有効性が確認された.これらの臨床試験における低血糖発現率は低く忍容性は良好であった.以上のように,ビルダグリプチンは経口投与で有効な選択的DPP-4阻害薬であり,血漿GLP-1濃度を上昇させ,膵島機能を改善すると共にインスリン抵抗性を改善した.ビルダグリプチンは2型糖尿病患者を対象とした臨床試験で優れた有効性と安全性を示したことから,新しいタイプの経口糖尿病治療薬として期待される.

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© 2010 公益社団法人 日本薬理学会
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