日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
高選択的DPP-4阻害薬アログリプチン安息香酸塩(ネシーナ®錠)の薬理作用および臨床効果
武内 浩二藤田 哲也廣居 伸蔵
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2011 年 137 巻 1 号 p. 43-50

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抄録
高選択的DPP-4阻害薬アログリプチン安息香酸塩(ネシーナ®錠)は2型糖尿病に対する治療薬である.アログリプチンは医薬分子構造設計(SBDD)技術を駆使して創製され,DPP-4の活性部位と共有結合は形成せず,静電相互作用,水素結合,π-πスタッキングなどの種々の相互作用をバランス良く,かつ効率的に利用することにより,DPP-4選択的に強力に結合する.2型糖尿病モデル動物において,アログリプチンの単回投与は血漿DPP-4阻害に伴う血漿中の活性型GLP-1増加,インスリン分泌促進および血糖低下作用を示した.4週間の反復投与試験においても糖化ヘモグロビンの低下および膵保護作用を認めたことから,アログリプチンの2型糖尿病治療薬としての有用性が強く示唆された.アログリプチンの臨床試験では,健康成人を対象とした臨床薬理試験が実施され,アログリプチンを1日1回投与することで,血漿中DPP-4活性は24時間にわたり高率に阻害され,血漿中活性型GLP-1濃度はプラセボと比較して有意に増加した.食事療法・運動療法を実施するも血糖コントロールが不十分な2型糖尿病を対象とした臨床試験において,アログリプチンの1日1回投与により,主要評価項目であるHbA1c変化量はプラセボ群と比較して有意に低下した.副作用の発現頻度は,アログリプチンの投与群とプラセボ群で大きな差はなく,低血糖を含め,特に頻度の高いものはみられなかった.また,アログリプチンの長期投与試験(52週間)において,血糖低下作用の持続性が示されるとともに,長期投与下の安全性および忍容性は良好であった.以上の基礎および臨床試験成績より,アログリプチンは1日1回投与により,長期間にわたり良好な血糖コントロールが得られるとともに,安全性が高く,忍容性に優れており,かつ低血糖の発現リスクが低いことから,2型糖尿病治療薬として有用な薬剤になると考えられる.
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© 2011 公益社団法人 日本薬理学会
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