抄録
薬学部6年制への移行に伴い,臨床実習の延長や実習前の客観的臨床能力試験に注目が集まっているが,従来からカリキュラムに組み込まれている薬理学は現在でも変わらず重要だと考えられる.近年の薬物治療の高度化・複雑化に伴い,薬剤師の業務は処方に基づく調剤といった医薬品の供給から,包括的な患者ケアを提供する方向に拡大している.業務の基礎となっている知識は幅広いが,とりわけ薬理学は土台となる知識である.薬理学の知識が将来薬剤師として患者ケアを提供する際に必要である実感を持つためには,従来の講義形式の薬理学の教育方法に工夫を加えることが望ましい.日米両国での薬学教育を受けた経験から感じたのは,疾患の治療への応用,臨床での薬の使用場面が想起できれば,学習意欲の向上が期待でき,身に付けた知識を臨床で患者ケアに応用することが可能になる.