2011 年 137 巻 2 号 p. 75-78
原子を組み上げ,新物質,新デバイス,新システムを作り上げるというナノテクノロジーの“ボトムアップ的手法”によるナノテクノロジー製品の先駆としてナノ粒子を挙げることができる.生命現象を司る分子機構に基づいた分子アッセンブリーシステムとして構築されたナノ粒子には,局所治療を成し遂げる極小デバイスやドラッグデリバリーシステム(DDS)の開発に利用の道が開かれている.DDSは,毒性の高い制がん薬を病変部位へ特異的に送達することのできる優れた投薬システムであり,がん治療用DDS製剤の開発が急がれている.本稿では,片岡らによって考案された制がん薬内包高分子ミセルの開発を紹介し,トランスレーショナルリサーチの在り方を考察した.