2015 年 38 巻 4 号 p. 265
特定のMHCクラスIIアリルは様々な自己免疫疾患の感受性に強く影響を与えることが知られている.最近のゲノムワイドの解析でも,多くの自己免疫疾患でMHCクラスIIアリルが最も強く疾患感受性に影響を与える遺伝子であることが再確認されている.しかし,特定のMHCクラスIIアリルがなぜ自己免疫疾患に関与しているかは依然として明らかになっていない.最近,我々は,MHCクラスII分子が小胞体内のミスフォールド蛋白質を分解させずに細胞外へ輸送するシャペロンとして機能することを明らかにした.さらに,MHCクラスII分子によって細胞外へ輸送されたミスフォールド蛋白質が関節リウマチや抗リン脂質抗体症候群等の自己免疫疾患で産生される自己抗体の特異的な標的抗原になっていることを明らかにした.特に,MHCクラスII分子に提示されたミスフォールド蛋白質に対する自己抗体の結合能は,MHCクラスIIアリルによる関節リウマチ感受性と非常に高い相関を示すことから,ミスフォールド蛋白質/MHCクラスII分子複合体が自己抗体の標的として自己免疫疾患の発症に直接関わっているのではないかという新たな自己免疫疾患の発症機序が考えられる.