日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
関節リウマチ治療薬アバタセプト(オレンシア®点滴静注用250 mg)の薬理学的特性および臨床効果
安岡 由佳後藤 新芹生 卓
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2011 年 137 巻 2 号 p. 87-94

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抄録

アバタセプトはCTLA-4細胞外領域とIgGのFc領域からなり,抗原提示細胞とT細胞間の共刺激経路を阻害することでT細胞活性化を調節する新規の薬理作用を持つ関節リウマチ治療薬である.関節リウマチの病態形成にはT細胞の活性化が重要な役割を果たしており,T細胞の活性化の調節には抗原提示細胞からの共刺激経路が必須であることが報告されている.関節リウマチを適応としている既存の生物学的製剤がTNFやIL-6等の炎症性サイトカインを標的としているのに対して,アバタセプトは炎症発生の上流で作用し,抗原提示細胞上のCD80/86と結合することによりT細胞への共刺激経路を阻害し,T細胞の活性化を抑制する.その結果,下流における炎症性サイトカインやメディエーターの産生が抑制される.アバタセプトは非臨床試験では,in vitro試験においてCD4陽性T細胞の増殖およびIL-2,TNF-α等のサイトカインの産生を抑制した.さらに,ラットの関節炎モデルにおいて,足浮腫,炎症性サイトカイン産生および関節破壊を抑制した.また,臨床試験においてもアバタセプトは,海外試験では,関節リウマチの標準的治療薬であるメトトレキサートの効果不十分例やTNF阻害薬の効果不十分例,さらには発症早期の関節リウマチに対しても疾患活動性の改善ならびに関節破壊抑制効果を示した.本邦においては,海外臨床成績を日本人に外挿して用いるブリッジング戦略に基づいて開発がすすめられ,2010年9月に関節リウマチに対する治療薬として上市された.新規作用機序をもつアバタセプトは,関節リウマチ治療において新たな治療オプションをもたらすものと考えられる.

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