日本薬理学雑誌
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新薬紹介総説
血小板造血刺激因子製剤/トロンボポエチン受容体作動薬ロミプロスチム(販売名:ロミプレート®皮下注250 μg調製用)の薬理学的特徴および臨床効果
古屋 良宏石井 裕三青野 友紀子新井 康正恩田 史昭長谷川 要柳田 誠
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2011 年 138 巻 1 号 p. 34-39

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抄録

ロミプロスチムは,骨髄中の巨核球およびその前駆細胞表面のトロンボポエチン(TPO)受容体に結合して血小板造血を促進する遺伝子組換えタンパク質である.ロミプロスチムのアミノ酸配列は内因性のTPO(eTPO)とは相同性がないにもかかわらず,TPO受容体への結合や細胞内シグナル伝達はTPOと同様であることが確認されている.ロミプロスチムはこの構造的な特徴により,第1世代のTPO受容体作動薬でみられたeTPOの中和活性を有する抗体の産生を生じることなく血小板減少症の治療に貢献することが可能と考えられる.特発性(免疫性)血小板減少性紫斑病(idiopathicまたはimmune thrombocytopenic purpura: ITP)は血小板に対する自己抗体の発現により主に脾臓において血小板破壊が亢進する一方で,血小板造血が十分に促進されないことで血小板減少を生じる自己免疫疾患である.ITPは通常は無症状のことも多いが,皮下出血斑,鼻出血や口腔内出血等を生じる場合がある.重篤な例では頭蓋内出血を生じ,死に至る場合もある.国内ではピロリ菌の除菌がまず行われ寛解する例も比較的多い.一方で非保菌患者や除菌が無効な患者にはステロイドなどの内科的治療や脾臓摘出術も行われてきたが,効果の持続や副作用の面で課題が多い.そこで長期にわたり安定して血小板数を維持する治療が望まれてきた.国内外の臨床試験において,ロミプロスチムはITP患者の血小板数を目標範囲に維持することが示された.米国では2008年に慢性ITPを適応症に承認され,2010年12月現在,欧米を中心とした28ヵ国で販売されている.我が国でも2011年1月に慢性ITPを適応症に承認された.ロミプロスチムは長期にわたりITP患者の血小板数を維持し,脾臓摘出を回避しうる可能性が示されている.今後,我が国の臨床現場におけるロミプロスチムの有用性が期待される.

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