日本薬理学雑誌
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実験技術
phMRI(pharmacological MRI):薬剤開発におけるfunctional MRI(fMRI)の応用について
余川 隆
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キーワード: phMRI, fMRI, 薬理MRI, 機能MRI, BOLD効果
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2011 年 138 巻 3 号 p. 117-121

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抄録

MRIを診断に応用する技術はここ20年間で大きく進歩した.無侵襲で体の軟部組織の病態変化を空間分解能高く画像化できることがMRIの特徴であり,内臓,脊髄や脳などの診断に適用されて今ではなくてはならないものになった.この方法を創薬研究に応用したものがphMRIである.製薬業界では中枢疾患治療薬の需要が高まっているにも関わらず,創薬にかかる莫大な費用と病態や治療における客観的なバイオマーカーが不足していることが原因で,新薬を容易に生み出せない状況が続いていた.このような状況の打開策としてMRIの1つの重要な方法であるfMRIを使った創薬バイオマーカー探索技術が進歩しはじめた.この方法によりヒトを含めた動物の脳機能をいろいろな側面で客観的に評価できることから,創薬バイオマーカーに対しfMRIは非常に有効であることが実証されphMRIと呼ばれている.具体的には薬品開発プロセスの異なったステージにまたがるようなターゲットバリデーション,中枢におけるオフターゲット効果,副作用ならびに治療濃度域の評価など早期の中枢への効果,早期のコンセプトの評価,患者の層別化,ドージングの最適化(投薬計画),レスポンダー識別等に関しphMRIによる信頼性の高いバイオマーカーが得られている.FDAがCPI白書で動物試験に画像法を用いることを推奨しており,創薬研究パイプラインの様々なポイントへ実験用MRIの導入が増えている.特に薬効薬理試験をはじめ毒性試験への応用が盛んになってきている.phMRIの使用が盛んになればより多くの信頼できるバイオマーカーが発見され,多くの有効な中枢治療薬の開発が促進されるだろう.また,様々なフェーズの精神疾患患者の脳機能と投薬の関係を詳細に調べることが可能になることを意味しており,まさに精神疾患の予防法の開発やテーラーメード医療が現実になる日が遠くないことを示している.

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© 2011 公益社団法人 日本薬理学会
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