日本薬理学雑誌
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特集 心血管疾患と炎症
心不全と炎症−12/15リポキシゲナーゼによる炎症の役割について
南野 徹
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2011 年 138 巻 5 号 p. 187-191

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抄録

心不全の病態生理には,交感神経系やレニンアンジオテンシン系などの制御異常が関与していると考えられているが,最近では,心臓における炎症の役割についても注目されている.我々は,心不全モデルの遺伝子発現解析を通じて,12/15リポオキシゲナーゼが不全心において著しく増加していることを観察した.そこで,心不全に対する12/15リポオキシゲナーゼによる炎症の役割を検証するために,心臓特異的12/15リポオキシゲナーゼのトランスジェニックマウスを確立した.その結果,心エコーでは,加齢に伴い心機能の悪化がみられた.組織学的検討では,加齢に伴う心臓線維化とマクロファージの浸潤の増加が認められた.これらの結果に合致して,心臓におけるMCP-1の発現が増加していた.心臓特異的12/15リポオキシゲナーゼのトランスジェニックマウスに対してMCP-1阻害薬による治療を行うと,加齢に伴う心臓線維化とマクロファージの浸潤の増加は抑制され,心機能の悪化が改善した.さらに,心不全に対する12/15リポオキシゲナーゼによる炎症の役割を検証するために,12/15リポオキシゲナーゼ欠失マウスに圧負荷心不全モデルを作成した.その結果,持続的な圧負荷によって引き起こされるマクロファージの浸潤や心機能低下が12/15リポオキシゲナーゼ欠失マウスにおいて改善していたことから,12/15リポオキシゲナーゼによる炎症は心不全の発症に重要な役割を果たしていることが明らかとなった.

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