日本薬理学雑誌
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総説
低分子ストレスタンパク質異常により発症する疾患の病態解明とその治療法の開発
三部 篤
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2012 年 139 巻 6 号 p. 256-259

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抄録

低分子ストレスタンパク質(heat shock protein: HSP)の遺伝子変異(点変異,欠損変異など)は,筋原線維性ミオパシー(myofibrillar myopathy: MFM)などの神経筋疾患,白内障などの眼疾患,遺伝性末梢性運動性ニューロパシー(distal hereditary motor neuronopathy: HMN)およびシャルコー・マリー・トゥース病(Charcot-Marie-Tooth disease: CMT病)などの神経変性疾患の原因であることが知られている.しかし,低分子HSP変異を原因とするそれぞれの疾患の詳細な病態発症機序は明らかではない.低分子HSP異常により発症する疾患の病態解明とその治療法の開発を目的として,心筋特異的α-Bクリスタリン点変異体(120番目アルギニン→グリシン)トランスジェニック(TG)マウスなどのような変異低分子HSPを発現している遺伝子改変マウスが作製されている.それら作製された病態モデルを解析した結果,主な疾患原因としては遺伝子変異によって発生した変異低分子HSPタンパク質自体が変性タンパク質として細胞内に蓄積し,ミトコンドリア障害や細胞死を介して病態発症に関与(gain of function)していることが明らかとなっている.また,これら低分子HSP関連疾患モデルを用いて,疾患治療の試みも盛んに行われている.

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